一家5人死傷の交通死亡事故解説・北海道砂川市

2015年06月10日 · 未分類

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北海道砂川市で発生した交通死亡事故。
単純に交通死亡事故で表現することができない悪質性、危険性を有している。

あまりに悪質危険な行為なため、なぜこのような事故が発生するのか、このような事故を未然に防止する策はないのだろうかなど
問題点が多く過ぎて曖昧になってしまう。

当社の佐々木は6月10日午後13時ころから
TBSテレビ「ひるおび」
に出演し、この事故の整理と解説を行った。

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事故は(この案件を果たして「事故」と表現することが適切であるかは別として)6月6日午後10時35分ころに発生した。
片側2車線の国道12号を北進していた乗用車と片側1車線の市道を西から東に進行していた軽ワゴン車が衝突した。

この事故で軽ワゴン車に乗車していた一家5人のうち、3人が死亡、1人が重体、さらに事故の衝撃で路上に投げ出された17歳の永桶昇太さん(16歳)が
後続車に1500mも引きずられて死亡した。

現場の国道12号は直線道路が約29kmも続く、「日本一長い直線道路」と呼ばれている区間で、夜間はスピードを出す車が多いことで知られている。

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この事故の問題点
1.高速度であること
  おそらく防犯カメラ等の映像から乗用車の速度は約130km/h程度の速度であったと考えられること
2.赤信号無視が原因になっていること
  現場の交差点は半感応式信号であり、軽ワゴン車側の道路に車両が来た時に感知して国道12号側が赤色信号に変わる。
  つまり、軽ワゴン車が交差点内に進入して事故が発生した本件では、国道12号を走行していた乗用車側の対面信号が赤色となっていたこと。
3.乗用車と後続車は知人同士の関係にあったこと
  乗用車と後続車は知人同士であり、ともに現場の国道12号を推定約130km/hの速度で走行していたこと。
4.後続車によるひき逃げ事故が発生したこと
  先行していた乗用車と軽ワゴン車の衝突によって、軽ワゴン車から路外に投げ出された永桶昇太さんを後続のピックアップトラックに1500mも引きずりながら走行したひき逃げ交通死亡事故が発生していること。
5.ピックアップトラックの運転手は容疑を否認していること
  ピックアップトラックの運転手は事故との関与を認めるものの、人を轢いたとは思わなかったとひき逃げの容疑事実を否認していること。
6.ピックアップトラック運転手に飲酒運転事実があること
  ピックアップトラック運転手は翌日警察に出頭したが、その際ビールジョッキ1杯を飲んでいたことを自供しているが飲酒検知結果では立件に必要な数値が検出されなかったこと。
7.多種にわたる法令違反が混在していること
  乗用車に対する危険運転致死傷罪のほか、その同乗者にはその幇助罪の適用が検討されること。
  乗用車の危険運転致死傷罪に対するピックアップトラック運転手の共同共謀正犯の適用が検討されること。
  ピックアップトラック運転手に対する死亡ひき逃げ事件のほか、人との認識が立証されれば殺人罪の適用も検討されること。
  飲酒運転免脱罪や飲酒運転同乗罪の適用も検討されること。
8.残念ながら被害者側の交通違反も検討されること。 
  軽ワゴン車の乗車定員は4人であるが、事故発生時は一家5人が乗車していた可能性が強いこと。
おそらくもっと法令違反に抵触する事実が存在すると思う。
9.任意保険が締結されていないこと
  事故の直接原因とはなりませんが、ひき逃げしたピックアップトラックには任意保険がかけられておらず、将来的に損害賠償での問題が避けられないこと。

このような悪質、危険、悲惨な交通事故を無くそうとして法令の厳罰化が制度化された歴史的背景がある。
それは一定の成果を見せていると思う。

しかし、罰則を重く厳罰化したところで悪質危険違反を伴う交通事故は一向に無くならない。
実際に厳罰化法令が施行された後にも、全国でたびたび信じ難い悪質危険違反による死亡事故が発生している。
北海道では昨年夏に、海水浴場にきていた被疑者が数時間にわたり飲酒したのちに車を運転、歩行中の女性3名を次々にひき殺す事件が発生したばかりである。

法令、罰則の厳罰化とは結局のところ
発生した事故の運転手等関係者に対する処罰、処遇に関する手続きの問題であり、
事故を未然に防止するという問題とは別問題として考えるべき課題である。

過去理不尽に奪われてきた多くの尊い命の犠牲を、我々は絶対に無題にしてはいけない。
この命に応えるのは、失われた命の犠牲を教訓に
繰り返される悲惨な事故の再発を防止する交通社会の構築であると思う。

我々はその方策を真剣に考えなくてはならない。

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