居眠り運転の事故調査

2012年04月27日 · 未分類

京都亀岡市の10人が死傷した少年の無免許運転交通事故で、少年は「ふっと意識がなくなり、一瞬眠ってしまった」と説明しているということです。これは言い訳としてよく聞く言い訳で、一般的にはその供述だけで少年は無免許運転の上、居眠り運転して事故を起こしたという理屈が通るところです。わからないでもない。
みなさんが学生時代、退屈な授業や講話を聴いている時に、どうしても睡魔に負けてしまい、こっくり、こっくりとしつつ、一瞬ガクンと頭が下がり、はっと目覚め、またこっくり、こっくりが始まり船漕ぎになっているけど、必死に寝てはいけないと頑張っている経験があると思います。これが居眠り運転の原理ですが、少年はこの「一瞬ガクンと頭が下がってしまった時、ふっと意識がなくなった」ことで事故を起こしてしまったと言っているのです。この睡魔の表現は説明したとおり我々も経験していることで、一般的には居眠運転として分かりやすい表現となり捜査も順調に進んでいる感じになってしまいます。
ところが、居眠り運転を立件しようとする時、このふっと意識がなくなり一瞬眠ってしまった、という点をいかに詳細に事故調査(捜査)しても的外れの調査結果となってしまうのです。不完全な調査結果ということになります。ここが居眠り運転の最も難しいところで警察官もできるなら居眠り運転での立件は見送り、できれば別の過失で送致したいと願います。
先ほどの退屈な授業中の例で、ではいったい授業が始まってから最初に眠気を催したのはいつですか?と聞かれると授業が始まって5分くらいしてからとか、もう授業が始まる前からすでに眠かったとか、いろいろとあやふやな、大体の説明となってしまいます。これが絶えず移動している車の運転行為中に置き換えると、最初に眠気を催した地点はどこですか?と指示説明を求めても、かなりアバウトで、いい加減な回答しかできないのです。少なくても実況見分調書の単位である10cm単位の説明はできず、さらに概算として1m単位で表現しようとしても無理だと思います。そこで調査官(捜査官)としては、「眠いと思って窓を開けた地点はなかったか?」とか「眠気覚ましにガムをかんだ地点とかジュースを飲んだ地点とか、たばこを吸った地点はなかったか・」などポイントとなる地点を教示し、本当にアバウトな地点を特定していくことになってしまうのです。ですから実況見分の図面も5kmと10kmとか長くなってしまうものです。誰だってやりたくない仕事です。まして運転手本人だって単なる友人との夜間ドライブで走った経路など覚えてる訳がありませんので、そのあたりから事件の真実があやふやになってしまうのです。実際にはこの次に、もう運転が無理だと思うくらいに眠気を感じた地点はどこか?という地点の特定もしなければなりません。交通事故調査に精通していない人は「そんな地点にこだわったってしょうがないじゃないか、もともと無理なことだし、ようするに少年は居眠り運転をしたと自供してるんだから十分だろう」と言います。しかし、居眠り運転を立証しようとするのだから「運転が無理だと思うくらいに眠気を感じた地点」で運転を中止していれば事故を未然に防止することが可能だったのです。この地点以外に事故を防ぐ場所はなかったのです。
この事故はどうして起きたんだ?という報道番組が放送されますが、当然、常習無免許の悪質性やあるいは通学路に潜在する危険性の検証、が主要内容になってしまいます。ところが、警察、検察の捜査機関では常習無免許の悪質性は当然捜査しますが、捜査のほとんどは運転開始から事故を起こして停止するまでの間で、睡魔が襲ってきた状況が主となっています。
結論まで長くなってしまいました。
このような捜査(調査)ですから、徹底した原因究明を警察に期待して、それを基に同種事故の防止を図ろうとしても、事故を未然に防止することができた地点の特定が居眠り運転を立件する警察捜査の着眼点であり、無理なわけです。
このような捜査側の背景を知った上で報道を見るとまた事故防止に関する違う見方があります。
京都亀岡市の事故での無免許運転と無免許運転ほう助の取り扱いについては次回に説明したいと思います。

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