一審死刑判決破棄、控訴審で無期懲役判決

2023年02月17日 · 未分類

2020年5月福島県三春町で男女2人をトラックで跳ねて殺害し、殺人罪、道路交通法違反などの罪に問われた被告男性(53才)は、一審福島地裁郡山シムの裁判員裁判で死刑判決を受けた。

この事件について当社は控訴審から被告人弁護士の依頼を受けて携わり、現地調査や一審資料の精査を行って意見書を作成し2022年11月、被告人側専門家証人として証人出廷した。

当社は一審死刑判決の量刑について意見を述べる立場ではないため、犯行動機と計画性の関連性について被告運転のトラックと現場の走行位置状況を踏まえて専門的立場から証言した。

被告人側弁護士の主尋問に続き検察官の反対尋問に応じて当社に与えられたの全ての役割を終えた。

2023年2月16日、仙台高裁で判決があり、死刑判決の判断で重視される犯行動機と計画性を一審福島地裁郡山支部より低く評価し死刑判決を破棄し無期懲役に減刑した判決を出した。

極めて重大な事件の裁判に携わった者として、死刑から無期懲役に減刑された意味について、被告には終生、被害者の冥福を祈り続ける時間に当てて欲しいと願うだけです。

被害に遭われたお二人のご冥福を心からお祈り申し上げます。

2023年2月17日、河北新報朝刊

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轢過死亡ひき逃げ事件逆転無罪判決

2023年02月11日 · 未分類

2020年12月、青森市内で横断歩道上に横たわっていた女性が青信号で通過したタクシーに轢過される事故が発生しタクシー運転手はそのまま運転を継続した。

事故の状況はドライブレコーダーに記録されており、青森地検はタクシー運転手について、自動車運転過失致死罪については不起訴処分とし、救護措置を講じずそのまま運転を継続した事実について道路交通法違反(ひき逃げ事件)として起訴した。

青森地裁は検察官の起訴事実を認め、タクシー運転手に対し懲役1年2月執行猶予3年の判決を言い渡した。

控訴審は仙台高裁で開始され、当社は控訴審からタクシー運転手の弁護士となった2名の弁護士から依頼を受け、ドライブレコーダーの映像解析や、延べ約8時間、3日間の走行実験を実施しその結果、被告人は無罪の意見書を弁護士に提出した。

2名の被告人弁護士は当初から非常に熱心に一審捜査側提出のドライブレコーダー解析結果に問題点を見出しており、実験に基づくデータ解析結果を正しく反映させることができた。

2023年2月9日、仙台高裁で控訴審判決があり、一審青森地裁判決を破棄し、被告人に対し逆転無罪判決を言い渡した。

2月10日、東奥日報朝刊

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轢過死亡ひき逃げ事故・無罪判決

2022年03月27日 · 未分類

平成31年2月、大阪四条畷市で発生した交通事故事件。

被告人に対する検察官公訴事実、罪名は「過失運転致死・道路交通法違反」です。

一般的には、「轢過死亡ひき逃げ事故」と言われる交通事件です。

当社は被告人弁護士より依頼を受け本案件の調査を開始し、最終的な結論として検察官公訴事実・罪名は成立せず、被告人は無罪であるという鑑定意見書を提出しました。

昨年末から2度の証人尋問を受けており、検察官提出の証拠(実質的には大阪科捜研作成の鑑定書等)について信用性がないこと等の詳細を説明していました。

その判決公判が3月25日大阪地方裁判所であり、検察官公訴事実について被告人は無罪の判決となりました。

(一部有罪判決、罰金5万円は交通事故の報告義務違反)

当社は被害者、加害者に関わらず調査依頼を受け、感情に流されず真に良心に従い鑑定結論を導いています。

2022年3.25ネットニュース

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信号交差点と横断歩行者等妨害違反

2021年02月17日 · 未分類

横断歩行者歩行者妨害の違反は、信号機のない交差点でも成立する違反ですか?

最近、このような問合せの電話を2件受けました。当社では横断歩行者等妨害違反による死亡事故を年間数件取り扱っています。当社佐々木は、白バイ乗務や警察署での交通指導取締係で勤務した経歴を生かして事件事故お処理にあたっています。白バイ乗務は、単独で現場において違反処理をする必要があり、当時の交通警察官の大先輩方から横断歩行者等妨害違反取締要領の教養を受けた経験があります。

取締経験者として、何故、冒頭質問者のような疑問が生じるのか不思議に感じる部分がありますが、その訳をゆっくり聞いてみると納得できました。

下記広報用の警察資料をご覧ください。

これは、インターネットで「横断歩行者等妨害違反」などのワードを検索して表ヒットした警察関係の広報用資料のごく一部です。

上記資料は警察庁ホームページの抜粋で、下は熊本県警交通企画課だより第59号を抜粋したものです。(ほかにも同様の広報紙面は多数あります。)

多くの広報紙面(資料)で、横断歩行者等妨害違反は「信号機のない横断歩道」に限定しているように法令の趣旨を説明しています。

もちろん信号機のない横断歩道では歩行者が優先されるので間違いではありません。

しかし私が交通指導取締業務に従事して、横断歩行者等妨害違反の取締りを行うにあたり、大先輩から受けた指導は信号機のある横断歩道も立派に横断歩行者等妨害違反が成立し、私自身の取締り経験でも、ほぼ100%に近く横断歩行者等妨害違反の違反は、信号機のある横断歩道において実施していました。

信号機のある横断歩道での横断歩行者等妨害違反とは?それは「横断しようとする歩行者等」がキーワードになると思います。

以下、私が講演を行う際に用いる資料で説明します。

上記図の場合、歩行者Ⓐは歩道上で赤信号のため待機しています。歩行者Ⓐは横断歩道を横断する目的で待機しているのですが、対面する歩行者用信号機が赤色で待機している時には、法令が言う「横断しようとする歩行者等」に該当しません。横断歩行者等に該当しないのですから、青信号の自動車①は②の方向へ横断歩道上を通過していくことができ、横断歩行者等妨害違反にはなりません。(ある意味当然で、わかりやすいと思います。)

しかし自動車③が青信号で左折した時、交差点出口側の横断歩道では歩行者Ⓑが横断歩道を横断しようとしていた場合、自動車は④の位置で停止し歩行者Ⓑの横断を妨害してはいけません。歩行者Ⓑを無視して左折を継続した場合には自動車に横断歩行者等妨害違反が成立し、取締りの対象になります。

同様に自動車㋐が右折して横断歩道を通過しようとする時、右折出口側の横断歩道近くに歩行者等がいなければ、自動車は㋑方向へ一時停止することなく右折走行を継続することができます。

信号機のある横断歩道での横断歩行者等妨害違反については、上図のとおり歩行者等が横断しようとしている横断歩道のⒶの位置に歩行者がいる場合には、自動車は右左折で①から②へ向かう時、必ず横断歩行者を優先させなければなりません。他方、自動車㋐は横断しようとする歩行者等がいないので運転を継続して横断歩道上を通過しることができまう。

法令は「自動車は全ての横断歩道で停止しろ」とは言ってません。

以上はあくまでも信号機がある横断歩道で、法令上の横断歩行者等妨害違反の対象車なる、自動車と歩行者の位置関係です。あくまでも法令上です。

理想的には法令上の自動車運転が望まれるのですが、実は現実的でない場合も多々あります。法令上の横断歩行者等妨害違反の条文を全ての場合に適用することが現実的ではない理由こそが、自動車運転手に横断歩行者等妨害違反が浸透されにくい側面になっていると考えられます。

全国のどこの都市部にでもある、比較的大きい横断歩道がある信号交差点を想定し、パターン毎に分類して説明します。

実際に自動車を運転している方は自分自身のこととして理解しやすいと思います。

上の図では、青信号を左折しようとした自動車①は、Ⓐ点から歩行者が横断しようとしているのを認めた場合、法令上は停止しなければなりません。しかし交差点が大きい場合などでは、Ⓐ点の歩行者が自動車①の前に到達するには長い時間を要し、歩行者Ⓐが自動車の前に到達する前に自動車①は安全に(歩行者Ⓐに具体的な危険を及ぼすことなく)横断歩道上を左折通過することができます。自動車①は一旦停止した上で、歩行者Ⓐの通行を妨げない位置関係にある場合には、横断しようとする歩道等がいるからといって直ちに横断歩行者等妨害違反が成立するとは言えない場合があります。

上図の場合、自動車①は左折する時にⒶの歩行者を認め①地点で停止し、歩行者Ⓐが自動車の前を通過してⒷ地点まで行ったのを確認し、歩行者Ⓑの背中側を通過していきました。この場合にも現に横断歩道を歩行している歩行者等がいるのだから、自動車は法令上の横断歩行者等妨害違反の対象車両になります。法令違反の対象車両になるからと言って自動車①は、歩行者が完全に横断歩道から歩道上に渡り切るまで停止していなければいけないのかと言えば、やはり現実的ではありません。

上図の場合、自動車①は左折する時に歩行者Ⓐを認め一時停止しました。歩行者は自動車の前を通過してⒷ点まで到達したので、自動車①は歩行者Ⓑが反対側の歩道まで到達する前(横断し終える前)に背中側を通過して左折しました。自動車を運転する人は頻繁に経験する運転方法だと思います。注意深く見ているとパトカーもこのような歩行者の背面側通過方法を取っているのを見かける時があると思います。

横断歩行者等妨害違反の条文には、「歩行者の背面側の通過は除外する」という規定はありませんので、横断歩道を現に歩いている歩行者等がいるのだから条文に従えば横断歩行者等妨害違反ということになります。しかし自動車①は歩行者が横断歩道を渡り切って歩道に到達するのを確認してからでなければ左折を再開できないとなればはやり現実的ではありません。

当然、歩行者の正面側であっても、背面側であっても、歩行者が具体的に危険を感じてその場に立ち止まるような位置関係であれば横断歩行者等妨害違反が成立します。

歩行者が受ける具体的な危険性とは、歩行者の年齢や身体能力等によって変化し一律に数値定量化することができない要素になっており、警察も一律に取締りが進まない理由でもあります。

信号機のある横断歩道でも横断歩行者等妨害違反が成立します。警察庁では信号機のない横断歩道での取り締まりを強化する通達を出しておりますが、信号機のある横断歩道でも重大事故は毎日発生しています。

信号機のない横断歩道での停止率を全国的な集計で順位をつけるよりも、それはそれとして、横断歩道では歩行者に具体的危険が生じない施策を推し進めることが本論だと思います。

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池袋暴走事故初公判

2020年10月15日 · 未分類

2020年10月8日、池袋暴走事故初公判が東京地裁で始まり、飯塚被告は車両を暴走させた原因について、ブレーキとアクセルの踏み間違えとする捜査側主張に対し、自動車の何らかのトラブルによる暴走であるとして起訴事実を否認した。ご遺族の気持ちや検察官提出の証拠に基づいて考えると、飯塚被告の否認は多くの国民の理解を得られていないようである。
当職はご遺族らとともに現場を訪れ、実際に現場の道路をプリウスで運転してみて飯塚被告が異常な加速で事故が発生させていることは間違いがないと確信している。

このコラムでは初公判で飯塚被告の否認が、反省の度合いを示すバロメーターとすることについて疑問を述べる。
飯塚被告の本心を知るすべが誰にもない。本人のみが知っているのだろう。弁護士の介在による否認という説もメディアは流れている。
当職の推定でも、おそらくは高い確率で飯塚被告はアクセルペダルとブレーキペダルの踏み間違えをしていると考えている。
しかし、当職がそのように考える客観的証拠はない。単に30年以上自動車を運転してきた経験に基づき、現場の道路を走行してみた結果である。

仮に本当は飯塚被告がアクセルとブレーキの踏み間違えをしたかもしれないのに、それでも飯塚被告が本心から踏み間違えをした覚えはない、と記憶していた場合、私たち部外者は飯塚被告にどのようなことを望むのでしょうか?
警察が捜査した結果を基本とする検察官提出の証拠があるのだから、踏み間違えをした記憶がなくても、それは記憶違いであり、ご遺族の気持ちや結果の重大性を鑑みれば、飯塚被告は否認すべきではない、ということになるのでしょうか?

これは警察や検察官が作成した捜査書類が絶対に正しいということを前提にしているから生まれる発想である。。
しかし、当社は日本全国の加害者側からも被害者側からも交通事故調査の依頼を受けているが、加害者側であれ被害者側であれ多くの事件事故当事者は、警察や検察の捜査書類を殆ど全くと言っていいほど信用していない。
事件事故当事者の中には、警察は捜査的に無能な集団であると言い切る人さえいる。この警察作成書類を何の疑問も持たずに受け取る検察官には、裁判の有無(起訴、不起訴)を決める権限を持たせること自体が不適切であるという主張もよく聞く。

或いは目撃証人さえいれば、自分たちは裁判で救われたのに、という事故当事者も多く見ている。
反対に目撃証人があやふやで的を射ぬ証言をしているのに、何の証拠もなくただ「見た人がいる」という証言のみで裁判が進められていることを直接経験した当事者もたくさんいることも事実である。

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捜査結果について、本心から捜査結果を信用していない者にとっては被害者側であれ、加害者側であれ素直に信用して受け入れることができないのである。
その理由は、捜査の未熟性のみならず、捜査機関によるデータの捏造、自動車会社によるデータの捏造など事件処理の根幹を脅かす事件が実際に発生していることも要因になっていると思う。

当社は、今回の捜査結果が被害者側に有利に働くからその時は、捜査結果を信用しましょう、とか、今回の捜査結果で不利に働く部分は信用しないことにしましょうなどと、人の生命身体財産に関わる事件事故の証拠の信用性を当事者の立場上の都合で変えてはいけないと考えている。
現実的には、民事裁判、刑事裁判とも都合の悪い証拠は双方が出さないを原則として進められているから、当社と依頼人との間で意見の対立が生じる場合もあるのだが。

裁判の進行については法律家に任せるとして、当社は、提出された証拠について全ての事件事故当事者が真に内容を納得することから加害者の反省も始まるし、被害者の救済も始まると考えている。

その上で飯塚被告が検察官提出にかかる証拠についてどう感じて、否認しているのかを考えたい。

実は、この点について証拠の保全措置に関する制度が確立していないところに問題がある。
先日までメディアを賑わせていた元TOKIOの山口被告の飲酒運転事件、飲酒検知結果は0.7である。
飲酒検知結果は、重要な証拠である。
このため、警察官は呼気の採取から飲酒検知の経過、結果の確認記録、封印署名までの一連の過程を全て被疑者本人の面前で行っている。
その証拠保全措置が、任意の呼気検査を確実なものにしており、後日、被疑者が0.7も出ていなかったという否認をさせない措置を講じている。

大型トラックのタコグラフチャートを実際の運転席から抜き取る時にも、必ず運転手等の立会の下で時間等を確認し写真撮影しながら抜き取る。
覚せい剤検査も、排尿時から署名封印までの写真撮影を行い、他人の尿だという否認をさせない証拠保全措置を講じている。(それでも科捜研に尿が移動した後の経過は被疑者が知ることができないことであるが。)

しかし自動車事故でEDRのデータが重要なウエイトを占めることが想定される場合でも、捜査機関は被疑者不在のままデータの収集やデータをメーカーに移送し、解析結果をまって捜査側としてメーカーの回答を被疑者(被告)などの事件事故当事者に示すやり方が一般的である。

だから事件事故当事者が捜査側に解析データの信用性を聞いても、捜査側はメーカーが言っているので間違いない、としか回答のしようがない。
事件事故当事者が直接メーカーに問い合わせても、メーカー側は問い合わせに対応してくれない。
これでは捜査の経過やデータ内容に不信感を持った被疑者(被告)が、証拠に対して、或いは捜査に対して真に納得することができない。

捜査結果を信用しろ、メーカーの回答を信用しろというのは第三者であるから言えるのであり、事件事故当事者(特に否認や捜査結果に疑問を抱いている当事者)は、それを受け入れられないものである。

やはり事件を解明する重要な部分の証拠の解析は、終始、事件事故の当事者を立ち合わせて、解析の経過を丁寧に説明しながら結論を出す制度を考える時期にきていると思う。

メディアに登場する多くのコメンテーターやYouTubeの中には、もし飯塚被告が検察官の証拠を信用できないのでれば、否認する根拠理由を自ら証明すべきだとする意見もある。
これは最もらしい正義の意見のように見えるが、極めて無責任な意見で現実的ではない。
現制度下では、被疑者(被告)であれ被害者であれ、事件事故当事者が自らの証拠を収集し、収集したデータを解析して証明の結論を出すことはできない。
そもそも重要な証拠物は捜査側に押収されており、事件事故当事者が自由に見て触れることができない。

仮に飯塚被告に事故を起こした事故車そのものを預けたところで、車の正常、異常を解析することなどできない。
被害者やご遺族にしても、事故車を渡されてもお手上げである。
やはり事故車の解析にはメーカーの資機材と知識に頼らざるを得ない。
だからこそ、車の解析結果が事件の真相究明に大きな影響を及ぼすならば、その解析過程には捜査側と捜査側が選任した立会人のみならず、被疑者(被告)側、被害者側の両当事者を参加させる必要があると思う。
特に過失犯の否認事件では、防犯カメラ映像や自動車のEDRデータなど客観的データの解析過程も含めて、当事者に対し体験記憶や認識に誤りであることを丁寧に説明する義務は捜査側にあると思う。

制度的に被告が完全否認を継続したままでも有罪判決となる。
当職が扱った否認事件でも、裁判官は「あなたは事件を否認していますが、当裁判所の判断は有罪です。」と述べ事件が終結している。
被害者遺族にとって刑事裁判で被告が否認したままでも裁判上は有罪になった方が、判然としない証拠で無罪判決になるよりは当然いい。
しかしそれでは、被害者遺族が求める心の中からの反省と適正な処罰、被害者の適正な救済は得られないと思う。
被告にしても裁判制度上、有罪とされたから仕方ないが、今でも自分に過失はないと確信している、と言い聞かせ刑期が過ぎるのを待つだけとなる。

結局、証拠は誰のものなのか、というこれまでに多くのご遺族が訴えてきた部分の制度化の問題である。
例え公的機関が作成した書面と言えども、秘密裏にまとめられた書面に信用性が得られるほど、現在の捜査機関が作成、提出している書面は加害者にとっても被害者にとっても信用性は高くない。

重要な証拠は、加害者にも被害者にも有利不利に作用する場合がある。
しかしそれが証拠だと当社は考えている。

連日、池袋暴走事故に関する記事を見ていると、事故防止の必要性は当然ながら証拠保全の在り方の制度化や証拠の共有性議論は欠かせないと思いながら、事件の自認、否認と世論の評価を感じている。

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元TOKIO山口達也による飲酒交通事故

2020年09月23日 · 未分類

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9月22日、元TOKIOのメンバー山口達也容疑者が東京都練馬区の道路で飲酒の上、大型自動二輪車を運転し信号で停止している前の車に追突する事故を起こして現行犯逮捕された。
山口容疑者からは、呼気1リットル当たり0.7ミリグラムのアルコールが検知された。

政令で定められた酒気帯び運転の検挙基準が0.15ミリグラムであるから、検挙基準の約5倍のアルコール量ということになり今後は常習的に飲酒状態になっていたのか、いつ、どこで、誰と、どんな理由で飲酒をして、事故の時は何処へ向かおうとしていたのかなどが捜査の焦点になってくる。
もちろん向かおうとしていた先にいた人が、飲酒運転でバイクを運転して来る容疑者の実態を把握していたのかなども捜査の対象になる。

ところで今回の山口容疑者の飲酒交通事故を受けて、酒気帯び運転と酒酔い運転の違いについて多くのメディア関係者から問い合わせがある。
多かったのは、今後捜査が進むにつれて酒気帯び運転から酒酔い運転に変更して送致されることがあるのか、という内容でる。

この点について、山口容疑者は事故現場において臨場した警察官に酒気帯び運転で現行犯逮捕されているため、捜査が進展したからと言って今後、罪名が酒酔い運転に変わることはない。
現行犯逮捕とは、現に罪を行い、または行い終わった者(現行犯人)については、犯罪事実に絶対間違いがないから逮捕状がなくてもその場で逮捕できるという逮捕手続きである。
現場に臨場した警察官が、山口容疑者について現に酒気帯び運転で事故を起こした者と判断し、酒気帯び運転の事実に絶対間違いないという状況であったから逮捕したもので、捜査が進展したからと言って現行犯人と認めた理由が変わることがない。

事件全体の流れの中で変更になる要素としてあるのは、現時点では追突された方に怪我がないため、山口容疑者の犯罪時事は飲酒運転の上で物損事故を起こした事実であるが、今後仮に追突された方から医師の診察による診断書が提出された場合には、飲酒運転と自動車運転過失傷害罪という罪名になる点である。

捜査の方法について、警視庁から送致を受けた検察官が勾留請求をして身柄を拘束した上で捜査を継続するのか、勾留の必要性はないと判断し身柄を釈放した上で任意捜査にするのかを判断することになる。
口裏合わせなどの証拠隠滅行為や逃亡の恐れがなければ単純な飲酒事故では釈放して在宅に切り替えるのが一般的である。

釈放されたからと言って刑事上、行政上の責任が軽減されるものではなく本人にとって失う代償は大きい。

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交通死亡ひき逃げ事故・否認事件民事判決

2020年06月26日 · 未分類

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当社が関わり鑑定書を作成している交通死亡ひき逃げ事故・否認事件の民事裁判判決が6月22日、岐阜地方裁判所であった。

事件の経緯はジャーナリスト柳原三佳氏がヤフーニュースで詳細に記事にしているから参考にされたい。

https://news.yahoo.co.jp/byline/yanagiharamika/20200625-00185014/

この事故は2014年6月12日、被害歩行者の岡田紀子さんが横断歩道を歩行中に被告車両に跳ねられ死亡し、被告車両は救護措置等を取らずに現場を立ち去り、その後の捜査で被告車両の血痕付着状況等でが認められた車両を押収した上で、6月18日、被告車両を運転していた女性を逮捕した。
もちろん岐阜県警の捜査の経過や逮捕の必要性があるからこそ、裁判官は被疑女性に対する逮捕状を発付したのである。

被告女性は、事故への関与を否認し続け、理由を定かにしていないが岐阜地方検察庁検察官は被告女性を不起訴処分(裁判を求めない処分)とし、岐阜検察審査会も検察官の不起訴処分を支持する決定をした。

当社は、ご遺族と事件を担当した名古屋南部法律事務所の高森裕司弁護士からの依頼を受け、司法解剖所見、DNA型鑑定結果、防犯カメラ映像解析等、警察捜査記録を精査し多角的視点から否認を続ける被告運転車両が事故を起こした唯一の車両であるとする結論の調査報告書を作成した。

しかし、岐阜地方検察庁検察官は交通死亡ひき逃げ事故の被告として起訴しない方向性定を維持している。
当社として、まだまだ力不足であったかと反省をしたいところであるが、事件の記録を見てもどこを反省すれば良かったのかわからなかった。

事件は民事裁判へと移り、当職も証人尋問を受け審議が続いていたが6月22日、岐阜地方裁判所民事2部で判決公判があった。
判決分で裁判官は、長年交通事故捜査に従事していた佐々木の調査報告書内容は合理的で信用できるとして、被告女性の100%過失を認定し損害賠償を命じ、刑事と民事で異なる司法の判断となった。

ご遺族は、今後も被告には適正な法の処罰を求めており、当社でもまだやりつくせていない部分があるのであれば応援したいと考えている。

例え刑事上で不起訴処分となっても、諦めてはいけないと実感した。
これまで多くのご遺族と、苦しい裁判に関わってきたが、最後まで諦めないご遺族の力はなによりも大きいと感じている。
多くの支援者の皆様、ありがとうございました。

岡田紀子様のご冥福をお祈り申し上げます。

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軽傷の診断が招く交通事故の危険性

2020年05月30日 · 未分類

5月28日、さいたま市で自転車の高齢男性が軽自動車に跳ねられる事故が発生し、救急搬送された。
この事故で自転車の男性は軽傷と診断されたが、帰宅後から容態が変化し29日未明に死亡した。

当社では同様の事故案件を3件取り扱い、現在も調査は継続中である。現職の頃から数えると5件ほどになる。
そのうち1件は、交通事故と死亡との因果関係の証明が困難であるとして、自動車運転手の刑事責任は見送られている。

速度をもった自動車と自転車や歩行者の事故では、安易に軽傷との診断は避けるべきではないかと考えます。
人の体に対して、アスファルト路面が凶器となることは十分にあり、自動車との直接衝突による負傷程度よりも遥かに大きい傷害をあたえることは頻繁にある。

自動車運転手の刑事処罰が困難になるからという理由ではなく、生命の安全を第一に考え経過観察の入院は必要だと思う。

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交通事故調査

2020年05月30日 · 未分類

ヘッドライトの照射範囲について
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夜間の交通事故ではヘッドライトの照射範囲が重要なウエイトを占める事故態様がある。
同じ自動車であっても、すれ違い用照射と走行用照射では大きく見え方が異なり、また同じすれ違い用照射でもカットオフラインの位置を変化させることでも違いがある。

単純にすれ違い用照射では、約40m前方を照射するとは言えず、当社が実施した軽自動車、普通乗用車、大型トラックを用いた実験では自動車の先端から12m先の路面を照射する車種もあった。
もちろん、12m以上遠方に光が届いているが路面から離れること光量が極端に少なくなり、黒系の着衣を着ている場合では確認が困難であった。

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また左右方向の照射範囲も大きく異なり、すれ違い用照射では左方への照射範囲が右方への照射範囲に比べて狭い。
これらは車種によっても異なる。

夜間のヘッドライトの照射範囲が問題になる交通事故では、できる限り正確に照射範囲を明らかにする必要がある。

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死亡事故調査・鑑定

2020年03月24日 · 未分類

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静岡の事故調査から戻り、新潟へ向かう。
今年2回目の新潟。

宮城県警を退職して現在の会社を立ち上げてから、全国各都道府県警察官が作成する実況見分調書や捜査報告書を読む機会があります。
司法書類等の書式は、実は全国共通ではありません。

慣れないと読みにくい書式を使用している都道府県もありますが、この点、新潟県警の書式は大変読みやすい。

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