どんな事故にも特効薬はない。
高齢者事故を防止する対策にしても、有効な方法はない。究極は免許を自主返納させることと言うが、それで事故の未然防止は図れるのだろうかと疑問が残る。
私が現職中は、「若年者の交通事故防止」が盛んに叫ばれていた。
若年者は重大事故を発生させる割合が多いという理由からだ。
あれから20年が過ぎ、現代は「高齢者の事故防止」である。決して若年者の事故が極端に減少したわけではない。
若年者であれ高齢者であれ、社会全外が、車を運転する際に必ず発生する「危険」と「その危険は人の死傷」という重大な結果を与えることを教育していかなければいけないと思う。
産経ニュース
2017.1.13 08:09
「買物で車がどうしても必要だった…」 免許更新で診断書偽造容疑の70歳を書類送検 脳梗塞後遺症で左半身不自由も運転
運転免許の更新時に求められ、偽の診断書を提出したとして、警視庁が有印私文書偽造・同行使容疑で、東京都稲城市の男(70)ら3人を書類送検したことが12日、捜査関係者への取材で分かった。
男は脳梗塞の後遺症で左半身が不自由で、医師から運転を止められていた。「買い物などで車がどうしても必要だった。そのままでは免許の更新ができないと考え、偽造した」と容疑を認めている。
他に書類送検されたのは男の70代の姉と、知人の30代の女。送検容疑は平成27年3月と昨年3月、運転免許本部(品川区)に偽造した診断書を提出したとしている。書類送検は10日。
捜査関係者によると、男は脳梗塞の後遺症の「高次脳機能障害」。26年11月の免許更新の際、府中運転免許試験場(府中市)の職員から医師の所見などを記入する診断書の用紙を受け取り、提出するよう求められていた。しかし、男は主治医から運転を止められていたため、姉らに診断書を書かせた上、主治医の印鑑を偽造して押印していたという。
提出された診断書に不審な点があると気付いた職員が主治医に問い合わせて発覚。男は「体への負担などから運転が必要」などと説明したという。
地域交通充実急務…「行動範囲狭まることに抵抗感」
書類送検された東京都稲城市の男は、運転できない健康状態だったにもかかわらず、車が欠かせない生活を送っていたため、免許更新を試みていた。同様に免許を失うことに抵抗を感じる高齢者らは今後も増えるとみられる。「交通弱者」に向けた地域交通の充実が急務となっている。
「行動範囲が一気に狭まることになるから、免許を失うことに抵抗感を抱く人は多い」
ある警察幹部は現状をこう語る。高齢者の交通死亡事故の「究極の解決策」ともされる運転免許の自主返納だが、浸透しない理由の一つが「生活のため」だ。一昨年、全国で65歳以上の申請での免許取り消し件数は27万件に達したが、「移動手段を失うことが嫌で返納しないと考える人は多い」(警視庁幹部)という。
国土交通省が昨年公表した交通政策白書によると、地方の一般路線バス事業者の約4分の3が赤字事業者となっており、乗り合いバスの路線は平成26年までの5年間だけでも計6197キロが廃止された。移動のための“足”がどんどん減っていっていることがうかがえる。
車の代替手段として期待されるのが、予約制の乗り合いタクシーやバスだ。自治体やタクシー会社が取り組みを進めており、東京都檜原村は村内の事業者に委託し、1回100円で予約制の乗り合いバスを運行。新潟県三条市や静岡県富士宮市などでも乗り合いタクシーが評価を得ている。
日本交通事故調査機構の佐々木尋貴代表は「地域交通の充実は国の施策としても取り組むべき課題だ」と指摘。高齢者の運転の可否の判断や事故の防止に関しては、「家族など周囲の人たちが目配りをしてあげることも必要だろう」と話している。