交通事故の捜査が杜撰になる理由

2014年01月10日 · 未分類

交通事故捜査に疑問を抱く当事者は多い。それは被害者だけではなく、被疑者側も疑問を感じることがあります。
確かにその疑問の中には当事者の勘違いというものもある。しかし、明らかに当事者がいうとおり
どう見てもこの交通事故捜査結果はおかしいだろうというものも多数あります。そして、当事者がおかしいと捜査に不信感を抱いた事故を再調査すると
次々に事実と違うことが見えてくるから恐ろしい。

なぜ、こんなに交通事故捜査は杜撰だと評価されるのだろう。
私なりの経験から感じるのは、警察という組織目的の弊害なのではないかと思うようになりました。

警察は何故、必要なのか。警察は何をするために存在するのか。
そう問いかけられた時、みなさんはどのように答えるだろう。

私は間違いなく、警察は法令違反を犯した犯人を捕まえることに尽きると感じています。
警察は犯人を捕まえるために、多くの費用と時間と人員をつかって様々な捜査をするのです。強盗犯人、窃盗犯人、詐欺、殺人などすべては犯人を検挙することが優先順位の第1位にあります。

誰も見ていないところで密かに行われた窃盗事件でも、警察は緻密な捜査を丁寧に積み重ね犯人を捜し出し検挙するのです。その緻密な捜査に費やす時間、労力、費用は膨大なものですが、それでも犯人を捜し出し捕まえることが第一使命ですから
徹底的に犯人像を絞り込み、裁判官から逮捕状、捜索差押許可状などの令状の発付を受けて逮捕するのです。

ところが、これに対してごく一般的に発生する交通事故は、死亡事故であれ重傷事故であれ、既に犯人がもう判明していて
緻密な捜査によって犯人を割り出す作業をする必要がないのです。
警察官が現場に臨場した時にはもう犯人がその場所で待っていてくれているのです。これほど警察官にとって助かることはありません。
法令違反を犯した者が、自ら110番通報して警察官の臨場を待っていてくれているのです。このような犯人は他の犯罪ではありえません。
窃盗犯人が「今、〇〇の家で窃盗をしたので、お巡りさん早く来て下さい」と110番通報をしているようなものなのです。

交通事故では犯人を捜し出すための緻密な捜査をする必要がないのです。
多少曖昧でも、そのようなことは気にすることはありません。曖昧な部分が判明しなくても、犯人はもう決まっているからです。
あとは粛々と発生した交通事故を処理していくだけなのです。大体、大まかに判明した捜査結果について捜査報告書でまとめていく作業です。
物の壊れや痕跡を緻密に調査鑑定して結果を出す必要がないのです。

このような捜査でも当事者が納得していれば取り立てて問題になることはありません。
しかし、重傷事故や死亡事故の被害者遺族は、警察官よりも検察官よりも弁護士よりももっと真剣に交通事故を見ています。
被害者遺族の視点に立って、交通事故捜査の姿勢を見たら当然疑問、不信感は湧いてくると思います。

そんなこともまだ聞き込みしていなかったのか?こんな痕跡ができた経過も捜査していなかったのか?
そういう思いを抱いた被害者遺族はたくさんいます。私が普段お付き合いしている全国の交通事故被害者遺族の方の中にもたくさんおられます。

これがひき逃げ事件であれば、これから犯人を捜し出さなければなりません。そのような交通事故捜査では当然、痕跡や遺留品に犯人割り出しの手がかりを求めなければならないし
事故発生現場の沿線住民の聞き込み捜査なども徹底して行う必要が生じてくるのです。
その捜査結果の多くは、犯人を捜し出した後も、裁判が始まった後も有効に生かされます。

犯人を捜し出すために行う緻密な捜査を、一般交通事故捜査に求めれば、そこには「捜査経済」という言葉が立ちはだかります。
しかし緻密な捜査を割愛して、一方の言い分のみで交通事故の態様を構成していくと
絶対に正しい交通事故処理はできなくなります。

これまで自分側の信号が青色だと説明を受けていたのに、いつのまにか赤信号として処理されているといった事件も
身近に存在しています。
なんの証拠もないのに、ただ相手方運転手の証言で、対向してきた車が急に右側にはみ出してきたという交通事故態様が構成されていくこともあるのです。

そんな時、交通事故発生当時にできる限りの緻密な捜査を行っていないと
もう取り返しがつかなくなってしまうのです。

警察の存在意義が犯人を検挙することにあるのは間違いない、正しいことです。
国民は犯人の早期検挙を期待しています。
しかし、同時に緻密な捜査をも常に望んでいるし、緻密な捜査を常にしてくれているものとさえ信じ切っています。

捜査の基本は、犯人を捜し出すことであり、それは
絶対犯人に間違いない
という確信を掴む緻密な捜査だと思います。

たまたま、警察の交通事故捜査に疑問を感じたという死亡事故遺族の方と新年の挨拶をした後
大阪府警でまた「誤認逮捕」という報道を目にしてこのようなブログになりました。

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