交通法令違反と交通事故原因について

2012年04月07日 · 未分類

交通法令違反が交通事故原因であるかというと人身交通事故の場合は単純に「そのとおりです」とは言えません。
例えば、一時停止標識のある交差点で一時停止しないで進行した結果、交差道路を走行していた相手方と衝突し、運転手が怪我をしたという人身交通事故が発生したとしましょう。よくある交通事故形態です。
この場合、多くの方は事故の原因が一時停止しなかった方にある、と判断してしきりに相手方が一時停止しなかった、ということを証明しようよ詳細に自分が見た一時不停止車両の状態を警察官に説明します。交通事故の本質を理解していない警察官も、実況見分時に運転手に、一時停止をしていないこと、を認めさせてしまおうと、その指示説明を引き出すことに夢中になってしまいます。
ところが人身交通事故では一時不停止違反の状態を詳細に見分しても立件できないのです。賢い方ならお気づきでしょう。
一時不停止違反は道路交通法第43条の交通法令違反ですが、人身交通事故を処罰する法律は刑法211条2項の自動車運転過致死傷罪ですから、どんなに道路交通法違反の部分を捜査しても、適正な人身交通事故処理はできないのです。
一時不停止違反の否認事件を捜査する視点では人身交通事故の捜査を完了することはできないのです。
このような時、相手方の運転手が死亡してしまうと、その遺族は当然「なんで相手の人は一時停止しなかったんだろう?」という疑問が頭から離れず、死亡事故という受け入れがたい事実とは別の苦しみを味わうことになります。
担当の交通事故捜査係の警察官に、その疑問を投げかけたとしても「捜査上おことですからまだお答えできません」という回答になると思います。そしてその時になって初めて遺族として、少しだけ警察に対する不信感が芽生えてしまうのです。
この時、警察の捜査が一時停止をしなかった理由をしっかりと捜査して、それでも捜査上の秘密で答えられないのであれば、それは法律が要求している義務ですからやむをえません。しかし事故を担当した警察官が、一時停止をしなかったのは明らかだ、という側面でしか捜査をしていなかったのなら、「どうして一時停止しなかったんだ?」という疑問はずっと判明しないのです。
自動車運転過失致死傷罪では、遺族が疑問に感じた、「どうして一時停止をしなかったんだ?」という点が、まさに過失犯の本質で最も重要な部分になっているのです。理由はいろいろ考えられます。慣れない道路で標識を見落としたとか、携帯電話で話し込んでいるうちに標識を見落とした、とかボーっと考え事をしているうちに標識を見落としたなど、さまざまな理由があり、しっかり前を見て注意していれば標識に気付いて、きちんと標識に従って停止していれば事故は防げただろう、ということを証明しなければならないのです。かなり難しい捜査の分野です。
もし、皆様の中で単純に「一時停止しなかった過失により事故を起こした」という内容の書面をお持ちの方がいるなら、それは捜査不十分のまま処理が済まされたと思ってください。
ところで、今三重県警では、一時停止違反の否認事件でパトカー内で事情聴取していた女性が失禁してしまい問題になっています。否認調書の作成は、住所、氏名が明らかで逃走の恐れがないなら、後日、落ち着いてからでかまわないのです。トイレに行きたければトイレに行かせたあとに、警察署に来署を求めてからで何の問題もありません。むしろそうすべきでしょう。私としては関心をもって見ている事件の一つです。

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