交通事故・交通違反事件捜査経験者のプロとして、5月13日発売の「別冊宝島(宝島社)」に当社佐々木尋貴が登場している。出版される前に入念な取材とこまめな原稿チェックを積み重ねよくできた本である。率直な感想だ。
私が素晴らしいと感じるのはプロの職業人に対する取材に対して、ライターもまた驚くほどプロである。基本的なことは絶対に誤りがないと自信を持っているからできることである。それがプロの姿勢でもある。
平成25年4月15日、最高裁判所第三小法廷において警視庁府中警察署が速度規制を誤って交通違反の取締りをしていた問題に関する判決が行われた。
判決では、交通違反として検挙された15人に簡易裁判所が行った罰金の略式命令を破棄し、2人を無罪、13人は公訴(起訴)を棄却する判決を言い渡した。15人が既に納付した計96万円の罰金はそれぞれ返還される。
判決では府中市の市道は最高で60キロの走行が可能だが、誤って30キロとする標識が設置され、これに従って速度違反で検挙された300人以上のうち15人が2012年に略式命令を受けていた。
この日の最高裁判決は、60キロで運転していた2人を無罪、62キロ~79キロで走行したが、反則金の納付で済むはずだった13人については「略式命令は違法である」と結論付けた。
誤った規制標識で摘発した違反事実について、なぜ最高裁まで争うことになるのか甚だ疑問である。
そもそも速度取締りに従事する警察側が、プロとして取締りの大前提である規制標識の誤りを犯しているのだから、争う余地がないと感じる。
私も速度取締りに従事していたが、白バイであれレーダーであれ、また違反内容が速度違反であっても駐車違反であっても
標識で規制している違反の取締りを行う時には慎重に何度も標識が有効なものであるのか「公安委員会意思決定」とういう、いわゆる「告示」を入念にチェックした上で行っていた。
それが取締りに従事する警察官として、当然果たすべき義務であり、プロであると自覚していたからだ。
警察官も人であり、過ちもある。しかし、業務に関して犯してはいけない過ちというものがあり、それがプロの厳しさで職業倫理というものだ。
交通事故、事件捜査のプロとして、最高裁判決の意味を重く受け止めて欲しいと願う。