警察が逮捕した被疑者の身柄の拘束を継続するように求める検察の「勾留請求」を全国の裁判所が認めないケースが平成26年は、前年(平成25年)で1790件あり、10年前のおよそ5倍に増えたこととが日弁連のまとめでわかったというニュースがあった。
交通事故の逮捕と勾留については、当社ホームページのトップページ動画でわかりやすく説明しているのでそちらを参考にして欲しい。
勾留請求は検察官が裁判官に対して行うものであるが、警察としては一般的には「勾留の必要性について」という捜査報告書を作成して、検察官に対して警察としても逮捕した被疑者の身柄を継続して取り調べる必要があるということを報告している。
この勾留の必要性は刑事訴訟法によって厳格に定められている。
具体的には逮捕されている被疑者が
① 住居不定の場合
② 罪証隠滅のおそれがある場合
③ 逃亡のおそれがある場合
の3要件のどれかに該当していなければならない。
ひき逃げ犯人や、殺人、強盗、強姦、窃盗、詐欺など実際に逃走している被疑者を逮捕した場合であるなら、その後も十分逃走のおそれがある場合に該当するため裁判所としても勾留を認めるのが殆どのようである。
また、罪証隠滅のおそれというと実務上は物証のみならず供述証拠も含んでいる。俗にいう口裏合わせ工作なども立派な罪証隠滅のおそれと判断される。
また、逮捕事実となっている捜査結果について事実認定に際し「否認」や「黙秘」などしている被疑者の供述態度も罪証隠滅の恐れと許容されており、これが広く用いられている。
一般的な交通事故の場合は、被害の軽重にかかわらず被疑者が交通事故の事実を認めており、実況見分にも立ち合い、警察としても証拠保全が完了していれば勾留の要件を満たさないため
勾留請求をしない場合が殆どである。
それでは勾留しなければどうなるのか?
警察では被疑者を逮捕してから48時間以内に釈放して任意捜査として在宅で捜査を継続し、捜査が終結した段階で全ての書類を検察庁に送致するのである。
なにはともあれ、何をしてもこれほど自由な日本において身柄の拘束は重要な問題である。
捜査機関の勾留請求を却下する件数が5倍も増えているのは、裁判所も勾留の具体的な必要性の判断を厳密に3つの要件に絞って
判断するようになって来ているのだと思う。