2013年10月、宮城県多賀城市の市道で同時小学1年生の男児が乗用車に跳ねられ死亡する交通事故が発生した。
事故は本当に痛ましく、被害児童の無念やご遺族のお気持ちを思うと胸が張り裂けそうである。
当社は被害児童のご冥福を心から祈っている。
当社の基本的立場は被害者、加害者のそれぞれに偏らず、常に公平を貫くことである。
「真実に基づいた加害者の処罰と真実に基づいた被害者の救済」が行われるように努力している。
この交通事故について、当社は乗用車を運転していた加害者に交通事故の刑事的責任を負わせるべき「過失」はないという鑑定結果を提出し、一方運転手には刑事的責任があるという証拠を提出していた検察官に真っ向から反証した。
この乗用車の運転手に対する刑事裁判(自動車運転致死処罰法)の判決が2016年3月23日に仙台地方裁判所第1刑事部で行われ、裁判所は当社の鑑定書を採用し(一部否定された部分もある)、運転手に対して無罪判決を出した。
(詳細は3月24日のコラム参照)
ご存じのとおり日本の裁判は三審制であり、下級審の判決に不服があれば上級裁判所に控訴することができる。
控訴期限は一審判決の翌日を一日目として2週間である。
3月23日に無罪判決があった今回の仙台地裁判決に対し検察官が不服であれば4月6日までに控訴しなければならない。
しかし4月6日、仙台地検は控訴を断念し被告人と呼ばれてきた乗用車運転手の無罪が確定した。
(新聞は4月7日、河北新報朝刊)
当社鑑定書が「有罪確定率99.9%の壁」を破った。
新聞報道を読む限り、次席検察官の控訴断念理由は「仙台地裁判決を覆す新たな立証を行うのは難しい」という判断である。
もちろん事件担当弁護人(仙台弁護士会及川貴史弁護士・草場裕之弁護士)の力も大きく、事実上は当社鑑定書を覆す新たな立証手段をとれなかったということである。
当社鑑定書は単純であるが緻密である。
だから判決も緻密になり控訴する余地がなかったという感想である。
被告人と呼ばれ犯罪者となって人生を左右する加害者と、人生を奪われた被害者の無念という
とてつもなく重要な裁判において、当社鑑定書が採用された意義は大きく、公的信用性も増してきていると言える。
「主文、被告人は無罪」
この判決に心から喜べる事件関係者は、今回の交通事故裁判ではいない。
男児のご冥福を祈りに、本日も現場に手を合わせに行く予定である。