もう10年程前になるでしょうか、現場見分省略の交通事故処理制度というものができました。現場省略交通事故処理が可能な交通事故は①交通事故による怪我人がいない交通事故(物損事故である)②両当事者の車が自走可能で最寄の警察施設まで運転手が揃って事故車と一緒に移動できる(一方が飲酒、無免許、無車検等なら当然できません)③両当事者が警察官の現場見分を望んでいない、などの条件を満たしている場合の交通事故処理方法です。この制度は警察官の現場見分を行おうとすると、事故発生時から現場見分終了まで1~2時間程度、事故が同時多発している場合には更に長時間事故当事者は事故現場に拘束されることになり相当な負担が強いられることになり、その負担を軽減させるという目的で開始されたものです。同時に日々発生する物損事故処理をする警察官の事務処理を効率化させる目的もあります。比較的単純軽微な物損交通事故は事実上刑事手続きを行わず双方車両の被害修復による円満解決によって当該事故を終息する制度とも言い換えられます。民事上の被害回復であるなら警察を介さず保険会社調査員による調査手続きでも実務上は用を足すのですが、法律上、交通事故が発生したなら最寄の警察署の警察官に届け出る義務があり、また交通事故証明書の発行にはどうしても警察官が作成する物件事故報告書が必要なため、両当事者揃って、事故車と共に警察施設に出向き警察官が物損被害を確認する必要があるのです。※交通事故証明書の発行は自動車安全運転センターの業務であり、都道府県警察ではありません。このように大変便利で画期的な現場省略交通事故処理制度ですが、制度ですので一長一短が必ずあります。追突事故などで2~3日してから痛みが出てきて人身事故に切り替わる場合や、保険金詐欺事件などに悪用されやすい、示談解決が思うように進まず保険会社を巻き込んでのトラブルになるといったことが短所の例でしょうか。私の私見としては見ず知らずの人間同士が偶然に出会ったのですから、軽微な物損交通事故でも警察官の臨場と現場見分は省略せず、尚且つ携帯電話のカメラ機能で十分ですので、ご自身のお車のみならず、相手方の車の全体と破損部位の状態、散乱した部品の状態程度5~6枚の写真は撮影しておくほうが無難だと考えております。もちろんトラブルになる恐れが無いと判断できる事故であるなら現場省略交通事故処理制度はとても便利です。