私の所には全国の交通事故当事者から実況見分調書の写しが届く。実況見分調書はほとんど無条件に検察官も裁判官も、時には自分の弁護人でさえ信用し、高い証拠力を有している。これは刑事訴訟法上、実況見分を作成した警察官が裁判所に出廷し、真正に作成されたものであることを証言すると、被告人や弁護士が証拠として同意しなくても証拠として扱うことができるから、よほどのことがない限り実況見分調書を否定することは難しい。
それでは、実況見分調書を作成した警察官が、間違いなく自分が作成したもので偽造変造はしていないと証言すれば即、絶対的な証拠として認められるかと言うとそうではない。
最低限、実況見分を行った警察官が周囲の事象を正確に把握し、その把握した結果を正確に、間違いなく実況見分調書という司法書類に記載して、はじめて実況見分調書に書かれたことが真実であると言える。
実況見分調書とは実況見分を行った警察官が、自分自信で認識し把握した結果を正確に表現しなければならない。
実況見分を実施した日時が曖昧であったり(2回に分けて行った実況見分を1回にまとめて書いた実例もある)、存在すると記載してある物が実際は存在していなかったり、距離の計測結果が指示説明者と異なっていたりなど、もはや真正に作成された実況見分調書でなない。
そして、強い証拠能力が認められている書類は「実況見分調書」という表題が付されたものだけでなく、その内容が捜査機関による見分の結果を記載したものであれば「捜査報告書」も含まれる。
私の知る限りでは、現認報告書とか署名押印のある現場見取り図などだと思う。
私はこれらのことは、なんとなく教科書で習った記憶がある程度で再確認する機会が無かった。しかし、今回素晴らしい交通事故事件捜査の参考書に巡り合い、あらためて間違いではなかったことが理解できた。
交通事故調書の基本的な書類の代名詞である実況見分調書は、真剣に読み取らなければならない。
かつて実況見分調書は単なる行政文書に過ぎないと豪語していた交通事故鑑定人がいたが認識の甘さかもしれない。